「エタチンメイト」は、核酸のエタノール沈殿に使用するための共沈剤(高分子キャリアー)です。エタノール沈殿の際に本品を添加することで、白色の沈殿が形成され、微量サンプルでも目視による確認が可能になります。

エタノール沈殿をする際に、共沈剤の併用をされている方は多くいらっしゃるかと思います。
共沈剤は微量な核酸の回収や沈殿の目視化が目的ですが、実際にどの程度効果があるのか調べてみました。

実験

■使用した核酸: 
培養細胞MCF7からRNA抽出試薬「ISOGEN」にて抽出したtotal RNA 10ng

■比較データ:
①共沈剤なしでエタノール沈殿
②共沈剤(エタチンメイト、Code No.312-01791)を加えてエタノール沈殿
③エタノール沈殿なし(ポジティブコントロール)

■方法:
[サンプル調整]
①共沈剤なしでエタノール沈殿
:Total RNAを 10 ng/100 μLに調整した。
 さらに、3M NaOAc 3.3 μL, EtOH 250 μLを添加し、2分間シェイクした。

②共沈剤(エタチンメイト、Code No.312-01791)を加えてエタノール沈殿
:Total RNAを 10 ng/100 μLに調整した。
 さらに、エタチンメイト 1 μLを添加し、3M NaOAc 3.3 μL, EtOH 250 μLを添加し、2分間シェイクした。

③エタノール沈殿なし(ポジティブコントロール)
:Total RNAを 10 ng/12 μLに調整し、そのまま以下の逆転写反応を実施した。

[エタノール沈殿]
①・②のサンプルは、以下の手順でエタノール沈殿を実施した。
・14,000 prm, 10 min., 4℃で遠心
・上清を除去し、75% EtOH 500 μLを添加
・14,000 rpm, 5 min., 4℃で遠心の後、上清を除去
・14,000 rpm, 5 min., 4℃で遠心の後、上清を完全に除去
・12 μLのmilliQ水を添加し、vortexで溶解

[逆転写]
Total RNA 12 μLを1st strand cDNA合成キット「GeneAce cDNA Synthesis Kit」(Code No.319-08881)を使用してcDNAを合成した。cDNA溶液21 µLにTE 79 µLを添加して保存した。

[リアルタイムPCR]
上記のcDNA溶液を1,000倍希釈したサンプルをTemplateとし、「GeneAce Probe qPCR Mix II」(Code No.313-08823)を用いて、qPCRを実施した。
(ターゲット遺伝子:RPL13A)

結果:

目視の結果 

遠心前の時点で、②エタチンメイトを添加したサンプルでは、浮遊物がみられました。
また、遠心後では、②エタチンメイトを添加することで、沈殿を目視で確認できました。

RT-qPCR結果

サンプルCt値(n=3)
① 共沈剤なしでエタノール沈殿検出限界以下
② 共沈剤(エタチンメイト)を加えてエタノール沈殿36.87
③ エタノール沈殿なし(ポジティブコントロール)35.90

結論:

エタチンメイトを添加せずにエタノール沈殿を実施したサンプルでは、RT-PCR増幅がみられませんでした。
一方で、エタチンメイトを使用したサンプルではRT-PCR増幅がみられました。
このことから、エタノール沈殿を使用する核酸の回収の際には、エタチンメイトの使用が効果的といえるのではないでしょうか。

実験に使用した試薬